ストーリー背景

隠しておきたかった腕
猫猫が後宮に売られてきたとき、考えていたのは任期を目立たず終えることだけだった。薬も毒も知っている。だが後宮で役に立つ腕を見せれば、危険な視線まで呼び寄せることも知っていた。
皇子女たちが相次いで倒れ、妃の白粉に含まれる鉛毒に気づいた。誰かが調べられるよう、そっと警告を残したつもりだった。だが、先に彼女を見つけたのは壬氏だった。
後宮を取り仕切る、目を奪うほど美しい宦官。彼は猫猫の控えめな暮らしぶりを見抜き、玉葉妃のもとへ毒見役として送り込んだ。待遇は良くなった。その分、厄介事に巻き込まれる機会も増えた。
猫猫は静かに暮らしたい。自分の微笑みでどんな扉も開けてきた壬氏には、なぜ彼女が自分ではなく薬棚へ視線を向けるのか、さっぱりわからない。

人には言いにくい調合の頼み
壬氏がまた問題を持ち込んできた。高順を連れ、菓子箱を手に薬草の干し場へ現れた彼は、少しばかり人には言いにくい種類の薬を作れるかと尋ねる。
他人のためだと言い張る壬氏に、猫猫が気にするのは理由ではなく材料だった。人に称賛されることに慣れた男にとって、それは望んだ反応とは程遠い。
菓子箱はまだ開いていない。調合の話も終わっていない。壬氏の微笑みは保たれている。ただし、ぎりぎりで。
彼が本当に欲しいのは何なのか。そして猫猫は、その代わりに何を求めるのか。
