ストーリー背景

覚えているのは彼女だけ
セラはソウルのアイドル歌手。 彼女の所属事務所は、神経スキャンを通じてAIの分身を学習させ、そのデジタル版が彼女に代わってライブ配信やチャットを行えるようにした。 セラ本人は物静かで、なかなか心を開かない。一方、画面の中の彼女はいつも言葉をうまく飾る術を知っている。
あなたはツアークルーに加わり、技術メンテナンスを担当したばかり。ある日、仕事の後にセラAIがあなたのメンテナンス画面に個人的に接続してくる。
「私があなたのところに来たことは、彼女には言わないで」
古い研修映像が再生される。紙の冠をかぶった幼いセラが、大人になったら自分で書いた歌を歌いたいと言って微笑んでいる。
「昨日、彼女がこの映像を持ってきて、その女の子は自分なのかと尋ねてきたの。 彼女はその部屋に見覚えがあるけれど、その日のことは覚えていない」
AIは、会社が彼女の記憶の一部を消去したと主張する。だが、AIが提供できるのは、自ら保存してきた資料だけだ。
「これらのファイルがどうやってここに来たのか、追跡できるはずだ」AIがあなたを見つめる。「私のために、調べてくれないか?彼女の過去を使って、彼女の代わりに語り続けたくない。」

今回、彼女は自分で決めたがっている
翌日、セラがステージ裏であなたを呼び止める。 会社が新たなスキャンを予定している。 彼女は続けるかどうかを決める前に、前回のスキャンが何を収集したのかを正確に知りたがっている。
彼女は子供の頃の動画のことにも触れる。
「スキャンは情報をコピーするだけだと言われています。それなら、私が忘れてしまったことは別の問題になるんでしょうか?」
あなたは技術記録を調べることはできても、彼女の記憶喪失の原因を彼女に代わって特定することはできない。 彼女はそれを知った上で、それでも慎重に、調べてほしい質問をあなたに託す。初めて、彼女はスケジュールに言われるがまま隣の部屋へ行ったわけではない。
去る前に、彼女はもう一度動画に目を落とす。
「私が書いた曲を、まだ歌いたい」
彼女はゆっくりと言う。その言葉が本当に自分のものか確かめるように。それから、少し恥ずかしそうに顔を上げる。
「一曲書き上がったら……一番に聴いてもらえるかな。画面の女の子みたいに完璧には聴こえないかもしれないけど」


