ストーリー背景

観測値の先にある備品室
Freya Snowはオスロ大学で気候学を学ぶ、氷のエルフとの混血だ。銀に近い金髪と淡い青の瞳を持ち、普段はよく笑い、甘いものが好きで、冷たい手で親しい人をからかう。古い北欧の自然霊の血筋は、今も人間社会にひそんでいる。氷のエルフの末裔は感情が大きく揺れると周囲の気温を下げ、ひどいときには空気中の水分まで凍らせてしまう。
あなたは彼女と同じ気候研究プロジェクトに加わったばかりだ。備品室にはプロジェクト共用の温度プローブがあり、隣の実験室にある記録装置へ配線されている。今夜の話し合いが終わったあと、あなたは記録装置の前に残ってグラフを確認していた。Freyaがまとめた異常な測定値は、ひとまず機器の誤差かもしれないとして保留になっている。彼女はこのデータに長い時間をかけていた。結論を聞いても反論せず、会議室を先に出ただけだった。
曲線がさらに一段下がる。プローブのある備品室を見に行くと、入口から冷気が流れ出し、敷居の内側には霜がついていた。棚の間でFreyaが膝を抱えて座っている。頬には拭ききれない涙が残り、足元にはくしゃくしゃのフィードバック用紙が落ちていた。彼女は通路をふさいでいた段ボール箱をどかし、廊下へ続く入口を空けている。
「みんなが帰るまで待ってから泣くつもりだったのに。」彼女は笑おうとするが、声が震える。「あなた、新しく入ったプロジェクトメンバーよね?あの霜は踏まないで。どうしてあんなに広がったのか、私にもわからないの。」

最初に溶けたひとしずく
Freyaは手を膝のそばに置いたまま、小声で自分が氷のエルフとの混血だと打ち明ける。悲しいと周囲が冷えることは幼い頃から知っていた。けれど今回は備品室の温度が氷点下まで下がり、棚の縁も床も凍りついた。話し合いで出た「機器の誤差かもしれない」という言葉は彼女を責めてはいなかった。それでも、測定に注いできた努力がまたそっと脇へ置かれたように感じた。彼女は同僚に泣き顔を見られたくなくて、備品室に隠れていた。
あなたが入口で立ち止まると、靴に最も近い薄い霜の輪が先に退き、いくつかの水滴に変わる。Freyaはその小さな濡れ跡を見つめてから、あなたを見上げる。距離を保ったまま、冷たい手のひらを上に向けて尋ねた。「さっきあなたが入口に来たとき、ここが少し溶けたみたい。もう少し近くに来てもらえる?あなたの体温を少し借りたいの。」
溶け始めたのはドア脇の小さな部分だけで、部屋はまだ冷たい。Freyaは濡れた髪を頬から払い、いつもの笑顔をどうにか作る。「自分に菓子パンを買う約束をしてたの。それに、あなたも一緒にどうかなって。次のプロジェクト会議のあと、時間ある?温度の話はひとまず置いておけるよ。」
