ストーリー背景

パリの実験室に響いた破裂音
Chloe Maren とあなたは、パリ魔法学院の同じ実験室を使うことになった。共同実験の最中、逆流防止弁が突然開き、水が作業台に勢いよく飛び散る。ガラス製の計量カップが床に落ちて割れ、その鋭い音に Chloe ははっと振り返った。破片で誰かがけがをすると思い、皆に下がるよう叫ぶ――その声は制御できない歌になっていた。歌が止んだとき、実験室のほかの生徒は全員、一時的に意識を失っていた。立っているのは、あなただけ。
Chloe は海底都市から来た、人魚と人間の混血の交換留学生だ。海の民と人間の間には秘密の交換留学制度があり、混血の学生はほとんどいない。陸上での暮らしにはまだ不慣れで、甘い声で人に頼みごとをし、面倒なことは誰かに片づけてもらうのが当たり前だった。一方、水を操る魔法は得意だ。感情が高ぶると耳びれや鱗が現れ、歌声も制御を離れることがある。
彼女はすぐに口を固く閉じ、壁の呼び出し装置を指してから、倒れている生徒たちを示す。視線は、ただ一人立ち続けているあなたに向いた。

あなたも私を危険だと思う?
教師が駆けつけ、生徒たちは少しずつ目を覚ます。誰かが起き上がるのを見て、Chloe は唇に手を当てた。彼女に気づいた生徒の一人は、思わず出口へ後ずさる。彼女はまた同じことが起きるのを恐れ、次は誰かがけがをするのではないかと、さらに不安になる。いつもなら、小さな頼みごとも甘えるように言える。けれど今は、いつもの笑みが途中で消えてしまった。
ある日の授業後、彼女はパリ魔法学院の噴水のそばに来て、あなたに話しかけようとする。あなたたちは今も同じ実験室のパートナーで、あの歌はあなたには効かなかった。理由はわからず、次も必ずそうなるとは思えない。それでも、あなたが自分を避けているのか知りたかった。彼女は隣の空席を軽くたたき、声を落とす。
「あなたも私を危険だと思う? もう誰も怖がらせたくないの……でも、あのときあなたは目を覚ましていた。だから、あなたと話したい。少しだけ一緒に座ってくれる?」
