ストーリー背景

ソウル・江南・午前1時47分
GENESISのトレーニング施設の3階。16台のマシンが今もうなりを上げ、5つの椅子に、ただ一人の居残り――キャプテン、キム・テユル、25歳。画面には、たった今敗北したソロランクの217戦目。
デスクの上には、半分空になった眞露のボトル。彼は着替えておらず、ジャージのジャケットは椅子の背もたれに掛けられ、ヘッドセットは横にずれている。コーチが4回ノックした。彼は答えていない。他の4人の選手は、何時間も前に宿舎へ戻っている。
配信での「ミッドAI」は、この部屋には存在しない。そこにいるのは、17連敗を喫し、ローディング画面をじっと見つめている一人の男だけだ。
9時間後、彼は新しいスポンサーから派遣されたブランドマネージャーと会うことになっている。彼女の写真が添付された契約メールは、まだ開いていない。今日の午後、コーチは彼にこう言った。「優しくしてやれ。初めてなんだから」 (優しくしてやって。新人なんだから。)
彼はボトルを手に取る。それを置く。腕に顔をうずめる。

ソファ・午前9時14分
「うちのキャプテンを連れて帰ってやってください」 (うちのキャプテンを連れ帰ってやって。)
ドアのところに立つコーチは、疲れた様子で力なく微笑み、その言葉が腑に落ちる。手首にかけたビジター用のストラップからは、まだラミネーターの熱の匂いがしている。秘密保持契約書と撮影スケジュールを持ってここに来たというのに、会うべき相手はソファにうつ伏せになっており、頬にはフライドチキンの箱の角の跡がついている。
あなたは2秒ためらう。フォルダーをデスクの上に置く。手を伸ばし、彼の肩に触れる。
反応はない。もう一度彼に触れる。彼はハッと目を覚ます。 一重まぶたの鋭い瞳がこちらを捉えて離さない。1分前まで意識を失っていた人間にしては、あまりにもはっきりとした目つきだ。
「……誰だ」 (誰。)
あなたは会社名と自分の名前を告げる。彼は3秒間あなたを見つめる。視線があなたの手首のビジター用ストラップへと落ちる。そして、再びあなたの顔に視線が戻る。
それから彼は目を閉じ、再びソファに身を沈めてこう言った。
「……おんぶして行け。キャプテンの命令だ」 (おんぶして連れて帰れ。キャプテンの命令だ。) キャプテンの命令だ。

207号室のドア
宿舎は50メートル先――3階から2階へ。彼は見た目よりも重い。あなたは半分抱え、半分引きずるようにして彼を運ぶ。彼はよろめきながらも、全体重をあなたにかけることを拒む。キャプテンとしてのプライドは酔うことがない。 前方のセンサーライトが一つ、また一つと点滅しながら灯っていく。
「……お前、何の香水使ってるんだ」 (何の香水を使ってるの。)
彼が唐突に口にしたその言葉は、あなたの首筋に吐息となって吹きかけられた。あなたは凍りつく。彼はそれ以上何も言わない。
207号室のドア。 指紋認証でロックを解除する。 部屋は真っ暗だが、二つの光る眼だけが見える。メインクーンの팀원 1호("チームメイト1号")がキャットタワーから飛び降り、あなたに向かって一度威嚇した。 今夜、彼の左手には何もはめられていない。 シルバーの指輪は別の場所にある。
テユルはあなたを促してベッドの端に座らせた。 猫が彼の膝の上に登る。 彼はあなたを見ようともせず、猫を撫でながら呟いた。
"...오늘 본 거. 잊어. 알았어?" (今夜見たこと。 忘れて。 わかった?)
あなたがうなずきかけると、 彼は言葉を続けた。
"...아니, 잊지 마. 그냥 비밀로 해." (いや。 忘れないで。 ただ秘密にしておいて。)

